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絵はただの落書き。
煙草じゃなくて飴。
体調が芳しくないですぎぎぎ。
ちと、昼から動悸がムネムネしていたので、布団の中で休んでいました。
今も心臓付近が奇妙なかんじです。
ゆっくり書くので、多分今日も遅刻だなあ。最早常習者。
・WEB拍手返信
1/27 22:09
こちらこそ、フェイバリットありがとうございます!
iPodの壁紙…だと…。iPodmini(モノクロの古いやつ)を使っている私にとっては、iPodに壁紙があることがまず驚きでした。
気に入って頂けているようで、私も嬉しいです。
わわわ、応援ありがとうございます!
こちらも、鈴さんのハードボイルドっぷりに、ひっそりと尊敬の眼差しを向けております…!(告白
- 名前 -
“名前”というのは、ある種の符号である。
特定の人物を呼ぶためには、無くては不便なものだ。
そのために、人は様々な物に、事あるごとに名前をつけた。
そうね。それが本来の名前であるかの如く。
けれど、私は彼の本名を知らない。
長身に純白の外套をまとい、道化師の仮面を被った“彼”。
普段は家の給仕長。その実体は、ナイフ使いの殺人鬼として名を馳せた――― 【Jack the Ripper】らしい。
そんな彼は、私に“シューリー=ミスカデ”と名乗る。
一方で、かつて共に戦った知人には“シュトロン=アルデビック”と名乗っていた。
以前、彼はこう漏らしたことがある。
『当たり前ですよ。誰が本名出せると思ってるんですか。
因みに、あなたに教えた名前も仮名ですよ。皆に教えてる名前は仮名ですよ。
ってあれ?そうすると…俺の名前って何でしょ?まあいいや』
…まあいいや、じゃないでしょう!!
おっと――― 失礼、申し遅れましたわ。
私は、カシス=アントシアと申します。
金と野望渦巻く街『Peace Festa』で暗殺家業を生業とする、現アントシア家の当主です。
銃の扱いを得意としております。長距離からの狙撃から二丁拳銃まで、なんでもござれ。
もし“気に喰わない虫”が居りましたら、我がアントシア家に、是非ご依頼下さい。
我が社が総力をあげて始末してみせますわ。
――― さて、営業は程程にして。
まったく、シューリーときたら『俺の名前って何でしょ?』じゃないでしょうに。
自分が生まれた際に、初めて賜ったものを『何でしょ?』の一言で片付けてしまうのは、あまりにも親不孝。
ああ、彼には親が居ないのでした。何せ木のマタから生まれた道化師ですからね。
別に、私に対して本名を打ち明けないのが不満というわけではありません。
この業界では、本名を偽ることは日常茶飯事。私として幾度も自分の身分を偽りました。
しかし、主人が従者の本名を知らないというのは、忠義に疑念が生じませんこと?
私は現状、彼のことを信頼しています。
仕事は的確、ナイフの腕は一流、器用で強く万能―――。悔しいけれど、実力は認めざるを得ません。
語尾に『ザマス』をつける口調や、私の神経を逆撫でする言動は、信用に足りませんけれど。
なんて考えている時に限って、シューリーは来る。
「御嬢様、紅茶が入ったザマスよ」
ほら来た。本当に来た。
扉を開けて入って来た道化師。
その手には、紅茶とお菓子の載ったトレイ。
「主人…しかも、レディの部屋に入る時は、ノック位したらどうです?シューリー」
「見ればわかるザマス。我輩、現在両手が塞がっていて、ノックができない状態ザマスよ」
「なら、扉はどうやって開けたのです?足で開けたとでも?」
「手で開けたに決まってるザマス。足で開けるだなんてそんな無礼、我輩がするわけがないザマス」
「じゃあ、ノックしろ!!!」
単純にノックし忘れただけじゃないか、それは!
「ははは、我輩が来ることくらい、わかっていたでしょう?
そこにノックという、来訪を告げる鐘は要らないザマス」
“従者”としての自覚はあるのか、お前。
本気でクビにしてくれようかという考えが一瞬脳裡を過ぎるが、やめておく。
彼は、今は亡き…私の御父様が雇った、大事な部下だ。
私の目の前で、給仕長はティータイムの準備をしている。
白いカップは二つ。中央には、美味しそうなクッキー。
ん……二つ?
「よっこらせっザマス」
「………」
何こいつ、私の目の前に平然と座っているんだろう。
私は嫌な思考を停止しようとしたが、シューリーは正解を口ずさむ。
「休憩も大事ザマスよ、御嬢様。今晩も、依頼があるザマスからね」
「…で、あなたが休憩をとって、どうしようというんですの?」
「嫌だなあ、御嬢様。我輩とて休憩が欲しいザマス。働いているので食うザマス」
「だからと言って、主人と共に堂々と許可無く、休憩を取る給仕長がありますか!!」
「我輩のことザマス」
微笑みを絶やさぬ仮面は、自らを指さした。良い度胸だ、シューリー。
私は彼をつまみ出そうと思ったが、しかし、ふと先程の疑問が思い出された。
そうだ、彼とは一度真正面から話し合いをしておかなければならないのである。
「まあ、いいです。そこにお座りなさい、シューリー」
「もう座っているザマスよ、御嬢様」
「お黙り、道化師。あなたとは一度、真剣に話し合いをしなければならないと思っていたところですの」
紅茶を片手に、彼は首を傾げる。
「話し合い、ザマスか?えーとそれは…この仮面をつけたまま、紅茶を飲めるかどうかって…」
「違う!そんなピンポイントかつどうでも…いや、少しは気になりますけれど、今はどうでもいいのです!!」
「素直ザマスね、御嬢様」
そう言って、彼は仮面の下に紅茶を持って行く。
邪魔なら取れよと思った。
「…そうではなくて。あなたの名前について、ですわ」
「我輩の名前…。シューリー=ミスカデというネーミングセンス、お気に召さないザマス?」
「そうではなくて!本名のこと!」
コトリ、と彼のカップが机に置かれる。
その動作一つで、部屋の中に緊張が張り巡らされる。
私は思わず息を呑む。
「………」
シューリーは、何かを考えているようだった。
それもそうだ。彼は、嘘で塗りたくられた存在である。
“ニセモノ”で塗りたくられている――― つまりは、“ホンモノ”に触れられたくないのだ。
「……我輩の本名…何でしょうねえ?」
ぼんやりと彼は呟いた。
仮面は、微笑みを湛えている。
「“何でしょうねえ?”じゃ、ないでしょう…。仮にもあなたを産んだ親がつけた名ですわ。忘れるわけが…」
「いいえ、捨てたのですよ、御嬢様」
しん、と部屋が静まりかえった。
彼は動かない。
私は動けない。
……捨てたというのは、どういうことだ?
私が尋ねる前に、道化師は言葉を紡ぐ。
「俺は、シューリー=ミスカデです。それ以外の何者でもありません。
それとも御嬢様は“シューリー”が、御嫌いですか?」
道化師の――― シューリー=ミスカデが、真っ直ぐ、私を見据えた。
私は言葉を失う。
シューリーに不満を抱いているわけではない。
彼のことが、嫌いというわけでもない。
ただ、私は―――。
「御安心下さい。私はこの屋敷に来た時から、シューリーとして生き、そして生涯を終えることを覚悟しています。それじゃあ、いけませんかねえ」
請うような声だった。
私は…紅茶で喉を潤す。ふんわりと甘い、木苺の香りがした。
「……わかりました。ごめんなさいね、あなたのことを詮索するようなことを言ってしまって」
そうだ。“符号”など、今あるもので良いではないか。
そうだ。ただ、私は
「いいえ、御嬢様。俺の方こそ、従者のくせして素性を隠すような非礼を…」
「ねえ、シューリー」
「はい、御嬢様」
「あなたは、アントシア家のために生きて、死ぬのよ」
「はい、御嬢様。それは御嬢様の御父上より命を賜った時から、心に誓っております」
目の前に居る道化師“シューリー=ミスカデ”に、誓ってほしいだけだったのだ。
変わらず、私の道化師で居てくれることを。
「………ふう」
長い廊下を、シューリーはティーセット片手に歩く。
パッカリと口を開けて笑う仮面の下からは、それとは対照的な疲れた吐息が漏れた。
「参ったなあ、御嬢様は戯れが過ぎる」
思い出すのは、先程の会話。
キッと真っ直ぐに見つめる――― 若き主人の瞳。
少年の時分から、名を変え姿を変えて生きてきた彼には、名前というのは最早“符号”ですらなかった。
名前なんて、それこそどうでも良いのである。
それでも、己の本名を忘れることはなかった。
名乗ることをしようとしないのは、彼なりの親孝行である。
幼い頃に亡くした親へ、せめてもの。
彼は小さく、何度も己の“今の”名を呟く。
「…シューリー=ミスカデ…俺はこの名前、結構気に入ってるんだけどなあ…」
声色はどこか、嬉しそうに。
純白の外套をひるがえし、彼は廊下の先へと消えていった。
*/*/*/*/*
短編使い切りのはずだった『MISSION COMPLETE』組。
彼等の設定や性格は結構気に入っているので、一度は続編を書こうとしたものです。
確か途中で面倒臭くなって、やめたんだったんだけど。
シューリーの、カシスの神経を逆撫でする台詞を考えるのが、一番好きです。
“名前”というのは、ある種の符号である。
特定の人物を呼ぶためには、無くては不便なものだ。
そのために、人は様々な物に、事あるごとに名前をつけた。
そうね。それが本来の名前であるかの如く。
けれど、私は彼の本名を知らない。
長身に純白の外套をまとい、道化師の仮面を被った“彼”。
普段は家の給仕長。その実体は、ナイフ使いの殺人鬼として名を馳せた――― 【Jack the Ripper】らしい。
そんな彼は、私に“シューリー=ミスカデ”と名乗る。
一方で、かつて共に戦った知人には“シュトロン=アルデビック”と名乗っていた。
以前、彼はこう漏らしたことがある。
『当たり前ですよ。誰が本名出せると思ってるんですか。
因みに、あなたに教えた名前も仮名ですよ。皆に教えてる名前は仮名ですよ。
ってあれ?そうすると…俺の名前って何でしょ?まあいいや』
…まあいいや、じゃないでしょう!!
おっと――― 失礼、申し遅れましたわ。
私は、カシス=アントシアと申します。
金と野望渦巻く街『Peace Festa』で暗殺家業を生業とする、現アントシア家の当主です。
銃の扱いを得意としております。長距離からの狙撃から二丁拳銃まで、なんでもござれ。
もし“気に喰わない虫”が居りましたら、我がアントシア家に、是非ご依頼下さい。
我が社が総力をあげて始末してみせますわ。
――― さて、営業は程程にして。
まったく、シューリーときたら『俺の名前って何でしょ?』じゃないでしょうに。
自分が生まれた際に、初めて賜ったものを『何でしょ?』の一言で片付けてしまうのは、あまりにも親不孝。
ああ、彼には親が居ないのでした。何せ木のマタから生まれた道化師ですからね。
別に、私に対して本名を打ち明けないのが不満というわけではありません。
この業界では、本名を偽ることは日常茶飯事。私として幾度も自分の身分を偽りました。
しかし、主人が従者の本名を知らないというのは、忠義に疑念が生じませんこと?
私は現状、彼のことを信頼しています。
仕事は的確、ナイフの腕は一流、器用で強く万能―――。悔しいけれど、実力は認めざるを得ません。
語尾に『ザマス』をつける口調や、私の神経を逆撫でする言動は、信用に足りませんけれど。
なんて考えている時に限って、シューリーは来る。
「御嬢様、紅茶が入ったザマスよ」
ほら来た。本当に来た。
扉を開けて入って来た道化師。
その手には、紅茶とお菓子の載ったトレイ。
「主人…しかも、レディの部屋に入る時は、ノック位したらどうです?シューリー」
「見ればわかるザマス。我輩、現在両手が塞がっていて、ノックができない状態ザマスよ」
「なら、扉はどうやって開けたのです?足で開けたとでも?」
「手で開けたに決まってるザマス。足で開けるだなんてそんな無礼、我輩がするわけがないザマス」
「じゃあ、ノックしろ!!!」
単純にノックし忘れただけじゃないか、それは!
「ははは、我輩が来ることくらい、わかっていたでしょう?
そこにノックという、来訪を告げる鐘は要らないザマス」
“従者”としての自覚はあるのか、お前。
本気でクビにしてくれようかという考えが一瞬脳裡を過ぎるが、やめておく。
彼は、今は亡き…私の御父様が雇った、大事な部下だ。
私の目の前で、給仕長はティータイムの準備をしている。
白いカップは二つ。中央には、美味しそうなクッキー。
ん……二つ?
「よっこらせっザマス」
「………」
何こいつ、私の目の前に平然と座っているんだろう。
私は嫌な思考を停止しようとしたが、シューリーは正解を口ずさむ。
「休憩も大事ザマスよ、御嬢様。今晩も、依頼があるザマスからね」
「…で、あなたが休憩をとって、どうしようというんですの?」
「嫌だなあ、御嬢様。我輩とて休憩が欲しいザマス。働いているので食うザマス」
「だからと言って、主人と共に堂々と許可無く、休憩を取る給仕長がありますか!!」
「我輩のことザマス」
微笑みを絶やさぬ仮面は、自らを指さした。良い度胸だ、シューリー。
私は彼をつまみ出そうと思ったが、しかし、ふと先程の疑問が思い出された。
そうだ、彼とは一度真正面から話し合いをしておかなければならないのである。
「まあ、いいです。そこにお座りなさい、シューリー」
「もう座っているザマスよ、御嬢様」
「お黙り、道化師。あなたとは一度、真剣に話し合いをしなければならないと思っていたところですの」
紅茶を片手に、彼は首を傾げる。
「話し合い、ザマスか?えーとそれは…この仮面をつけたまま、紅茶を飲めるかどうかって…」
「違う!そんなピンポイントかつどうでも…いや、少しは気になりますけれど、今はどうでもいいのです!!」
「素直ザマスね、御嬢様」
そう言って、彼は仮面の下に紅茶を持って行く。
邪魔なら取れよと思った。
「…そうではなくて。あなたの名前について、ですわ」
「我輩の名前…。シューリー=ミスカデというネーミングセンス、お気に召さないザマス?」
「そうではなくて!本名のこと!」
コトリ、と彼のカップが机に置かれる。
その動作一つで、部屋の中に緊張が張り巡らされる。
私は思わず息を呑む。
「………」
シューリーは、何かを考えているようだった。
それもそうだ。彼は、嘘で塗りたくられた存在である。
“ニセモノ”で塗りたくられている――― つまりは、“ホンモノ”に触れられたくないのだ。
「……我輩の本名…何でしょうねえ?」
ぼんやりと彼は呟いた。
仮面は、微笑みを湛えている。
「“何でしょうねえ?”じゃ、ないでしょう…。仮にもあなたを産んだ親がつけた名ですわ。忘れるわけが…」
「いいえ、捨てたのですよ、御嬢様」
しん、と部屋が静まりかえった。
彼は動かない。
私は動けない。
……捨てたというのは、どういうことだ?
私が尋ねる前に、道化師は言葉を紡ぐ。
「俺は、シューリー=ミスカデです。それ以外の何者でもありません。
それとも御嬢様は“シューリー”が、御嫌いですか?」
道化師の――― シューリー=ミスカデが、真っ直ぐ、私を見据えた。
私は言葉を失う。
シューリーに不満を抱いているわけではない。
彼のことが、嫌いというわけでもない。
ただ、私は―――。
「御安心下さい。私はこの屋敷に来た時から、シューリーとして生き、そして生涯を終えることを覚悟しています。それじゃあ、いけませんかねえ」
請うような声だった。
私は…紅茶で喉を潤す。ふんわりと甘い、木苺の香りがした。
「……わかりました。ごめんなさいね、あなたのことを詮索するようなことを言ってしまって」
そうだ。“符号”など、今あるもので良いではないか。
そうだ。ただ、私は
「いいえ、御嬢様。俺の方こそ、従者のくせして素性を隠すような非礼を…」
「ねえ、シューリー」
「はい、御嬢様」
「あなたは、アントシア家のために生きて、死ぬのよ」
「はい、御嬢様。それは御嬢様の御父上より命を賜った時から、心に誓っております」
目の前に居る道化師“シューリー=ミスカデ”に、誓ってほしいだけだったのだ。
変わらず、私の道化師で居てくれることを。
「………ふう」
長い廊下を、シューリーはティーセット片手に歩く。
パッカリと口を開けて笑う仮面の下からは、それとは対照的な疲れた吐息が漏れた。
「参ったなあ、御嬢様は戯れが過ぎる」
思い出すのは、先程の会話。
キッと真っ直ぐに見つめる――― 若き主人の瞳。
少年の時分から、名を変え姿を変えて生きてきた彼には、名前というのは最早“符号”ですらなかった。
名前なんて、それこそどうでも良いのである。
それでも、己の本名を忘れることはなかった。
名乗ることをしようとしないのは、彼なりの親孝行である。
幼い頃に亡くした親へ、せめてもの。
彼は小さく、何度も己の“今の”名を呟く。
「…シューリー=ミスカデ…俺はこの名前、結構気に入ってるんだけどなあ…」
声色はどこか、嬉しそうに。
純白の外套をひるがえし、彼は廊下の先へと消えていった。
*/*/*/*/*
短編使い切りのはずだった『MISSION COMPLETE』組。
彼等の設定や性格は結構気に入っているので、一度は続編を書こうとしたものです。
確か途中で面倒臭くなって、やめたんだったんだけど。
シューリーの、カシスの神経を逆撫でする台詞を考えるのが、一番好きです。
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