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偽島のアレコレやった後、ご飯食べていたのでちこk(ry
偽島→一日一題 の流れは、ちと頭の切り替えが難しい気もするなあ。
これ終わったら印作らなくちゃ。明日の補講に使うから。
偽島→一日一題 の流れは、ちと頭の切り替えが難しい気もするなあ。
これ終わったら印作らなくちゃ。明日の補講に使うから。
- 夏至の頃 -
夏に至る、と書いて夏至。
その日は一年の内で、一番昼が長いと言われている。
…そんなこと言われたところで、実感できている者は居るのだろうか?
実際は、極めて少ないのではないだろうか。
と、彼は思う。
その日はざあざあ、雨が降っていた。
彼の家は、些か狭い家だ。
作りが狭いということもあるが、家の中が散らかっていて、余計に狭く思える。
そんな室内を行燈が照らし、昼間なのに暗い部屋の中を、じっくりと映し出す。
壁には祭りで買ったらしい、粗末な作りで悪趣味な、鬼の面が掛けられていた。
光と影を受けて、クッキリと。それは、迫力を持って。
そして、狭さに付け加えて、古くもあった。
雨漏りが心配で、事実、天井から少しばかり水が漏れだしている。
水滴は、床に転がった酒瓶を叩いて小さな音を立てていた。
けれど、彼はそれを見ることなく、湿気の中にあぐらをかいている。
「……夏至かあ」
雨音をまるで音楽のように楽しみながら、呟いた。
このように雨が降っては、いつまでが昼で、いつまでが夜かわからない。
折角の二十四節気だ。友人を招いて酒を酌み交わそうと思ったのだが。
「これじゃあ、準備のしようもねぇなあ…」
言葉こそ残念そうに聞こえるが、声音は決してそのような色を孕んではいない。
むしろ、楽しんでいるようでもあった。
それから、ゆっくりゆっくりと、時間が過ぎるのを楽しんでいた。
何もせず。ただただ、そこに座ってお茶を飲んで。
――― 鐘が鳴る。
暮れ六つ。逢魔時を告げる、鐘の音が。
トントン、と扉が叩かれた。
どうやら客が来たらしい。
足元に置いた長楊枝を咥え、扉を見る。
彼が返事をする前に、扉はゆっくり開かれた。
「こんばんは」
無礼には慣れているらしく、彼は客人を迎え入れる。
「こんばんは。雨だねえ」
客人も、赤い番傘を畳んで挨拶をした。
ほんの少し垂れたような黒い瞳が、独特の色気を持っている女だった。
真っ黒な髪を花魁のように結い、黒い地に金の刺繍が施された着物がよく似合って、美しい。
しかしその美しさは、どこか恐ろしく感じさせるような――― そんな姿をしていた。
「ああ、雨だなあ」
長楊枝を揺らしながら、家主は答えた。
客人は一言「邪魔するよ」とだけ言うと、家の中に上がり込んで来る。
上がり込んで部屋の中を眺めて――― 彼女は言った。
「……あんた、今日一日何してたんだい」
「座っとった。座って、夏至を楽しんどったよ」
普通のことだと言わんばかりにあっさりと、彼は言う。
そんな男の発言に、黒い瞳は呆れたように閉じられた。
「暇人だねぇ。暇なら本でも読みゃいいのに」
「趣味人と言ってくれ。それに、俺は暇じゃねえ。夏至を楽しむのに忙しかった」
「………屁理屈を」
溜息を吐く女に、彼はもてなしの茶をすすめる。
だが、彼女はそれを断って、懐から酒を取りだした。
きょとんとしている男に、女は「夏至だからね」と、ニッと笑いかける。
「アタシゃ、酒を飲む前に茶は飲みたくないんだよ」
「……俺は、準備も何もしょーらんのじゃけど」
「あれ、そうなのかい?折角の節目なのに」
今度は女の方がきょとんとする番だった。
男は少しばかり申し訳なさそうな顔をすると、
「ほいじゃあ、今からやろうか」
と言って、すい、と右腕を持ち上げる。
「ほい」
次の瞬間、辺りが眩しく光り――― そして、轟音。
「……随分な連絡手段だね」
「わかり易くてええじゃろう。
さて、しばらくすりゃあ、皆も来るじゃろ。用意せにゃなあ」
そう言って、男は腰を上げる。
「そうだ、アタシゃ八末と智里を連れて来るよ。あの子達、暇そうにしていたからね」
「…この家に、入りきるかなあ」
「大丈夫さ。男くさいよりゃあ、小さいながらも華があった方が良いだろう?」
「男くさいって…そねぇなこたぁ、ねぇと思うが…」
長楊枝を2、3度揺らし、頭を掻く。
そんな朝納を見て、金華は笑いながら、濡れた番傘を開いた。
雷の音に誘われて、些か狭い古びた家に、妖怪が集う。
それぞれ酒を持ち寄って、楽しそうに、嬉しそうに。
――― 夏に至る頃を、祝福して―――。
*/*/*/*
一人称ばかりだったので、三人称。
隠れ里集は数か月ぶりで、金華の口調を忘れていました。
朝納はトヨの応用でいけるけど、金華は気を抜くとお妙になる。
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