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なんかやる気起きない→ちょっと寝よう→0時過ぎた!!
今日も元気にチコック先生と仲良くしています。私です。
姉が春から名古屋に転勤だそうです。
とうとう一家離散か。冗句です。
私は大学卒業後、院に残って研究をするか表具師の鍛錬を積むかで悩んでいるので、はてさて。
東京方面はあまり好きではないので、早いとこJR西日本区域に帰りたいのですが。
便利と言えば便利なんですが、2年経っても落ち着きません。
姉はどうするのかねえ。
名古屋に永住するにしろ、不義理を働く奴と永住は勘弁してくれ。現実問題。
一人暮らしというのは、いざという時に誰も助けてはくれないものだと思っています。
来年度からは友人と同じマンション+近辺に彼というかんじで住む予定ですが、
それでも親兄弟が近くに居るのとは、また違います。
しっくり来ないというのかな。違和感と言うか。
血の繋がりが無いというのはこういうことか、と思います。
ネタも通じないしノリも違う。
考えてみれば、一人暮らしというのは、それなりに大層な話だなあ。
私よりも押しつぶされ易い姉のこと。
ぽんと死んじゃわないと良いんだけど。リアルな話。
まあ、そんな愚痴です。
今日も元気にチコック先生と仲良くしています。私です。
姉が春から名古屋に転勤だそうです。
とうとう一家離散か。冗句です。
私は大学卒業後、院に残って研究をするか表具師の鍛錬を積むかで悩んでいるので、はてさて。
東京方面はあまり好きではないので、早いとこJR西日本区域に帰りたいのですが。
便利と言えば便利なんですが、2年経っても落ち着きません。
姉はどうするのかねえ。
名古屋に永住するにしろ、不義理を働く奴と永住は勘弁してくれ。現実問題。
一人暮らしというのは、いざという時に誰も助けてはくれないものだと思っています。
来年度からは友人と同じマンション+近辺に彼というかんじで住む予定ですが、
それでも親兄弟が近くに居るのとは、また違います。
しっくり来ないというのかな。違和感と言うか。
血の繋がりが無いというのはこういうことか、と思います。
ネタも通じないしノリも違う。
考えてみれば、一人暮らしというのは、それなりに大層な話だなあ。
私よりも押しつぶされ易い姉のこと。
ぽんと死んじゃわないと良いんだけど。リアルな話。
まあ、そんな愚痴です。
- 探し物 -
精霊界の、平和な昼間。
俺の机の上はいつでも戦場。
積まれた書類に目を通し、一筆書き添えたり却下したり…。
そんな作業を繰り返していたら、突然携帯電話が震えだした。
折り畳み式のそれを開くと、“テムレクト”という機械音痴の名前が表示されている。
機械音痴が、よく電話をかけてこられたものだ。と感心しながら応じれば
「………無い」
開口一番、電話の向こうから聞こえてきたのは、情けない声だった。
「はあ?」
俺は聞き返す。無いって、何が。
「無いのじゃ。わ、わ、わ、わしの大事なもの…!!」
「ばあさんに、下らんジョークを吹っ掛けられる時間は無い。俺、忙しいから。切るぞ」
「ジョークを吹っ掛けたつもりはない!本当に無いんじゃって!!」
「確かに無いな、主語が」
数秒間の沈黙。
もしかして、主語が無いことに気付いていなかったんだろうか。
普段は“冷静沈着、聡明”と銘打たれる彼女なのだが、こうも慌てるとは珍しい。
確か、彼女の台所にあった美白化粧品を指摘した時以来だ。
「アレが!」
「どれだよ!!」
違った!ただ単純に、名称を忘れているだけだった!!
電話の向こうのばあさんは、アレアレと言葉を繰り返している。
「もう、アレと言ったらアレじゃろう!?」
「逆切れすんな。それ、俺が同じことやったら、絶対怒るだろ」
「アレじゃよ、鎌!」
ようやっと“アレ”が出てきたらしい。
……って、ん、鎌?
俺の胸の裏が、ざわりと波を打つ。
テムレクトは、精霊界で六大主――― 樹の主を務めている。
だが、有能な武器職人でもあり、その腕は精霊界随一と言っても過言ではない。
で、そんな彼女の最高傑作には“時空を切り裂く鎌”というものがある。
精霊界や人間界、魔界、神界など――― 各世界は、“時空”に配置されている。
つまり、時空の中に各世界があるというわけだ。空間超越―――いわゆる瞬間移動は、そんな時空を通って別所へ移動する。
また、時空は“召術”や“却術”にも深く影響するわけだが、それはさておき。
「もしかして、あれか…空間捻じ切ったり、する、やつ?」
恐る恐る俺は尋ねる。
彼女の言う“鎌”は、それ以外には知らないが…もしそれを紛失したとなれば、一大事だ。
「それ以外に何かあるか!」
「いえ無いです」
一大事が起こっていた。
彼女の作りだした“時空を切り裂く鎌”は、その一薙ぎで空間を切り裂くだけではない。
先に述べた“却術”に近く、例えば建物の一部分を切り取れば、その一部分は時空の彼方へ葬り去られる。
更に“却術”は無機物を消し去る術であるが、件の鎌は、生物の一部ですら時空へと吹き飛ばしてしまう。
腕を切られたら、二度と戻って来ないものと思えってことだ。
なぜそれを無くす!というか、どうやって無くすんだよそんなもの!!
「……いや、昨日、エフォールと酒を飲んで。つい、飲み過ぎて…。
気付いたら、その……無くなっておったのじゃ…」
思ったことをそのまま口に出したら、電話の向こうのテムレクトはしょんぼりとした声で言う。
エフォールというのは、簡単に言えば俺の師匠である。
テムレクトが武器職人ならば、彼は装飾職人だ。
二人は旧知の仲で、戦友でもあるらしく、揃って酒飲みだった。
「師匠まで居て、何でそんな…」
思わず頭を抱える。
300歳を超える大の大人。しかも精霊界じゃ実力のある精霊が二人居て、何をやっているんだか!
「と、とにかく、しゅう!わしに力を貸してくれ!!」
「本音を言えばすげー手伝いたくない。そんな大層なモノでなけりゃ、手伝わないぞ」
「かたじけない、恩に着るぞ」
電話を切って、机の上を眺める。
そこには、手付かずの書類が山積みになっていた。
俺は溜息を吐いて、空間を超越する。
向かう先は――― テムレクトの住む大樹だ。
次に地に足がついた時、そこはカラ風の吹く荒野だった。
水分の抜けた土は固まって、ゴツゴツとした肌を晒している。
その姿は岩に似てはいるものの、岩とは違う――― ひどく不自然で、不気味だ。
“死者の谷”は、いつでもこのように在る。
200年程前に発生した内乱で、この土地の精霊は死に絶えたそうだ。
以来、誰も寄りつかず、土地も荒廃したままである。
…俺も、あまり足を踏み入れたいとは思わない。
往来で慣れてはいるが…屍は無いはずなのに、ここはいつでも血生臭いのである。
そこを足早に通り過ぎれば、目の前に現れるのは、鬱蒼とした森。
“死者の谷”とは違った不気味さが漂うが、そんな所に好んで住むのがテムレクトだ。
以前、ネリィが『隠居?』と俺に尋ねたことがあるが、そのように思ってしまうのも無理は無い。
柔らかい土の上を、足を絡め取るかのように、無数の木の根が張り巡らされている。
初めて来るならば何度も転んでしまうだろうが、俺はさっさと通り抜けて、目的地へ進んでいった。
木々をくぐり抜ければ、そこは“時間樹”――― テムレクトの住処である、精霊界一大きな木に辿り着く。
いつも通り幹に手を当てると、人一人が入れる大きさの穴が開く。
迷うことなくその中へ入れば―――
「テムレクト!」
彼女の名を呼ぶ。
「しゅう!」
淡い光の中、彼女はうずくまっていた。
部屋の中はとんでもなく散らかっていて、彼女が全力で鎌を探していたのがわかる。
俺を見るや否や、駆け寄って来て
「無い、無いのじゃ!鞄の中も机の中も、探したけれど、見つからん…!」
鎌が鞄だの机だのの中に入るか。
「まあ、落ち着け。まず、昨日の行動を考えてみろよ」
俺は彼女を椅子に座るように促し、お茶を淹れてやる。
うーん、と首を捻りながら、彼女は昨日の自分の行為を思い出していた。
「……確か、夕方にエフォが来た」
「それで、酒盛りしたんだな」
「そうじゃ。二人でお互いの分野のことを話し合って…そうじゃ、確か、おんしのことも言うておったぞ」
「何で俺が出てくるんだよ」
「『あの子の制御も、そろそろ間に合わなくなるだろうなー』とかなんとか。その内顔を出してやれ」
言われて、俺は服の襟を引っ張る。
そこには小さなペンダントが、首からぶら下がっていた。
術力制御装置の制作を大の得意とする師匠は、度々俺の制御装置を新調してくれる。
が、それは今全く関係無い。
「わかった。それで、その後は?」
適当に頷いて、話を続けさせた。
きっと、その話をした後は、酒がまわっていたのだろう。
テムレクトは思い出せない様子である。
「……いかん、覚えて…ない。酒に酔って、寝た」
「………」
「そ、そのような目をするな。目を覚ましたらエフォは帰っていて、鎌も無かったのじゃ!!」
「その筋から考えれば、普通に師匠が怪しいわけだが」
「おんし、恩を受けた師を疑うというのか!!!」
疑うというか、話の流れから考えればそうだろう。
「わしが寝ておる間に、エフォ共々鎌がさらわれてしまったのかもしれぬ。これは、由々しき事態ぞ!!」
「そりゃ考え過ぎだろ。師匠は酒を飲んだって、そこまでヤワじゃない」
そう、彼は酒を飲んでも術を使えなくても、とんでもなく強い。
弟子の俺が言うんだから間違い無い。
「問題は、師匠が鎌を持って行ったと仮定して、その目的がわからないことだな」
「だから、エフォは…」
何をそんなに擁護しようとしているのだ。
「テムらしくない。別に、師匠が持って行ったと仮定して、それの何が悪い?
師匠が持って行ったのならば、それで良し。そうでなければ、俺がなんとかするよ」
そう言うと彼女は押し黙り、困ったように頷いた。
師匠は彼女にとって、唯一無二の戦友だ。疑われれば慌てるのも無理は無い。
俺もセイが疑われたならば、きっと、彼女と同じように擁護しようとするだろう。
俺は溜息を吐く。
「と言ってもなあ…こっから師匠んとこって、微妙に遠いし。師匠、携帯持ってないし」
「ふむ…ならば、手紙を使わすか!」
そう言って、彼女は部屋の隅に落ちていた紙を拾う。
拾った紙で手紙て、お前。
それ以前に、手紙より俺が出向いた方が余程早い。
「気の遠くなる話だから、やめた方がいいよ。俺が今から行って…」
やれやれと腰を上げた時である。
俺は、それに気付いた。
「テムレクト…お前」
「ん?」
「その紙…」
日を浴びぬ、白い手。そこには、先程部屋の隅で拾った紙。
俺は紙を彼女の手から奪い取ると、裏返しにする。
「………」
『鎌、借りていきます。ありがとう。
また返す時にでも、酒を飲みましょう。
追伸…酒に酔って寝るのはやめた方が良いと思う。冷えるよ』
ものすごく、見慣れた字だった。
首を傾げるテムレクトの前に差し出すと、彼女はなんとも形容しがたい表情を浮かべた。
「……な、なぜ。エフォール?」
「酒飲みながら、お互い武器だの装飾だのの話をしたって言ってたよな」
俺が言うと、ハッとした表情。今日のテム、表情コロコロ変わって面白いな。
「そうじゃ、そうじゃった。エフォが、術の補助としての装飾ではなく、武器性を持った装飾というのも面白いとかなんとか…言うておったような…?」
「それの参考に、鎌を借りてったわけだな」
俺は、テムレクトを見る。
テムレクトは、バツの悪そうな笑顔。
「……まあ、何事も無かったから、良いけどさ……」
思わず溜息が出た。
ホント、酒を飲み過ぎるのだけは勘弁してくれ。
かくして、平和な昼間は、酔っ払いババアによって潰されたのだった。
核にある自室に戻ると、出かける前よりも高く積まれた書類が、机の上に鎮座していて―――
――――― 俺は、今日何度目かの溜息を吐いた。
*/*/*/*/*
『精霊は化粧をするのか』を読んでおくと、話がわかり易い部分があります。
何か一つの事件を起こして、解決まで書いてみようと思ってやってみたのですが…。
4000字近い時点で、掌編の域を出ている。まあいいか。
いやまあ、昨日の『名前』も2000字突破しているのですが。
掌編はやっぱり、ワンシーンとして書くのが一番楽だなあ。
精霊界の、平和な昼間。
俺の机の上はいつでも戦場。
積まれた書類に目を通し、一筆書き添えたり却下したり…。
そんな作業を繰り返していたら、突然携帯電話が震えだした。
折り畳み式のそれを開くと、“テムレクト”という機械音痴の名前が表示されている。
機械音痴が、よく電話をかけてこられたものだ。と感心しながら応じれば
「………無い」
開口一番、電話の向こうから聞こえてきたのは、情けない声だった。
「はあ?」
俺は聞き返す。無いって、何が。
「無いのじゃ。わ、わ、わ、わしの大事なもの…!!」
「ばあさんに、下らんジョークを吹っ掛けられる時間は無い。俺、忙しいから。切るぞ」
「ジョークを吹っ掛けたつもりはない!本当に無いんじゃって!!」
「確かに無いな、主語が」
数秒間の沈黙。
もしかして、主語が無いことに気付いていなかったんだろうか。
普段は“冷静沈着、聡明”と銘打たれる彼女なのだが、こうも慌てるとは珍しい。
確か、彼女の台所にあった美白化粧品を指摘した時以来だ。
「アレが!」
「どれだよ!!」
違った!ただ単純に、名称を忘れているだけだった!!
電話の向こうのばあさんは、アレアレと言葉を繰り返している。
「もう、アレと言ったらアレじゃろう!?」
「逆切れすんな。それ、俺が同じことやったら、絶対怒るだろ」
「アレじゃよ、鎌!」
ようやっと“アレ”が出てきたらしい。
……って、ん、鎌?
俺の胸の裏が、ざわりと波を打つ。
テムレクトは、精霊界で六大主――― 樹の主を務めている。
だが、有能な武器職人でもあり、その腕は精霊界随一と言っても過言ではない。
で、そんな彼女の最高傑作には“時空を切り裂く鎌”というものがある。
精霊界や人間界、魔界、神界など――― 各世界は、“時空”に配置されている。
つまり、時空の中に各世界があるというわけだ。空間超越―――いわゆる瞬間移動は、そんな時空を通って別所へ移動する。
また、時空は“召術”や“却術”にも深く影響するわけだが、それはさておき。
「もしかして、あれか…空間捻じ切ったり、する、やつ?」
恐る恐る俺は尋ねる。
彼女の言う“鎌”は、それ以外には知らないが…もしそれを紛失したとなれば、一大事だ。
「それ以外に何かあるか!」
「いえ無いです」
一大事が起こっていた。
彼女の作りだした“時空を切り裂く鎌”は、その一薙ぎで空間を切り裂くだけではない。
先に述べた“却術”に近く、例えば建物の一部分を切り取れば、その一部分は時空の彼方へ葬り去られる。
更に“却術”は無機物を消し去る術であるが、件の鎌は、生物の一部ですら時空へと吹き飛ばしてしまう。
腕を切られたら、二度と戻って来ないものと思えってことだ。
なぜそれを無くす!というか、どうやって無くすんだよそんなもの!!
「……いや、昨日、エフォールと酒を飲んで。つい、飲み過ぎて…。
気付いたら、その……無くなっておったのじゃ…」
思ったことをそのまま口に出したら、電話の向こうのテムレクトはしょんぼりとした声で言う。
エフォールというのは、簡単に言えば俺の師匠である。
テムレクトが武器職人ならば、彼は装飾職人だ。
二人は旧知の仲で、戦友でもあるらしく、揃って酒飲みだった。
「師匠まで居て、何でそんな…」
思わず頭を抱える。
300歳を超える大の大人。しかも精霊界じゃ実力のある精霊が二人居て、何をやっているんだか!
「と、とにかく、しゅう!わしに力を貸してくれ!!」
「本音を言えばすげー手伝いたくない。そんな大層なモノでなけりゃ、手伝わないぞ」
「かたじけない、恩に着るぞ」
電話を切って、机の上を眺める。
そこには、手付かずの書類が山積みになっていた。
俺は溜息を吐いて、空間を超越する。
向かう先は――― テムレクトの住む大樹だ。
次に地に足がついた時、そこはカラ風の吹く荒野だった。
水分の抜けた土は固まって、ゴツゴツとした肌を晒している。
その姿は岩に似てはいるものの、岩とは違う――― ひどく不自然で、不気味だ。
“死者の谷”は、いつでもこのように在る。
200年程前に発生した内乱で、この土地の精霊は死に絶えたそうだ。
以来、誰も寄りつかず、土地も荒廃したままである。
…俺も、あまり足を踏み入れたいとは思わない。
往来で慣れてはいるが…屍は無いはずなのに、ここはいつでも血生臭いのである。
そこを足早に通り過ぎれば、目の前に現れるのは、鬱蒼とした森。
“死者の谷”とは違った不気味さが漂うが、そんな所に好んで住むのがテムレクトだ。
以前、ネリィが『隠居?』と俺に尋ねたことがあるが、そのように思ってしまうのも無理は無い。
柔らかい土の上を、足を絡め取るかのように、無数の木の根が張り巡らされている。
初めて来るならば何度も転んでしまうだろうが、俺はさっさと通り抜けて、目的地へ進んでいった。
木々をくぐり抜ければ、そこは“時間樹”――― テムレクトの住処である、精霊界一大きな木に辿り着く。
いつも通り幹に手を当てると、人一人が入れる大きさの穴が開く。
迷うことなくその中へ入れば―――
「テムレクト!」
彼女の名を呼ぶ。
「しゅう!」
淡い光の中、彼女はうずくまっていた。
部屋の中はとんでもなく散らかっていて、彼女が全力で鎌を探していたのがわかる。
俺を見るや否や、駆け寄って来て
「無い、無いのじゃ!鞄の中も机の中も、探したけれど、見つからん…!」
鎌が鞄だの机だのの中に入るか。
「まあ、落ち着け。まず、昨日の行動を考えてみろよ」
俺は彼女を椅子に座るように促し、お茶を淹れてやる。
うーん、と首を捻りながら、彼女は昨日の自分の行為を思い出していた。
「……確か、夕方にエフォが来た」
「それで、酒盛りしたんだな」
「そうじゃ。二人でお互いの分野のことを話し合って…そうじゃ、確か、おんしのことも言うておったぞ」
「何で俺が出てくるんだよ」
「『あの子の制御も、そろそろ間に合わなくなるだろうなー』とかなんとか。その内顔を出してやれ」
言われて、俺は服の襟を引っ張る。
そこには小さなペンダントが、首からぶら下がっていた。
術力制御装置の制作を大の得意とする師匠は、度々俺の制御装置を新調してくれる。
が、それは今全く関係無い。
「わかった。それで、その後は?」
適当に頷いて、話を続けさせた。
きっと、その話をした後は、酒がまわっていたのだろう。
テムレクトは思い出せない様子である。
「……いかん、覚えて…ない。酒に酔って、寝た」
「………」
「そ、そのような目をするな。目を覚ましたらエフォは帰っていて、鎌も無かったのじゃ!!」
「その筋から考えれば、普通に師匠が怪しいわけだが」
「おんし、恩を受けた師を疑うというのか!!!」
疑うというか、話の流れから考えればそうだろう。
「わしが寝ておる間に、エフォ共々鎌がさらわれてしまったのかもしれぬ。これは、由々しき事態ぞ!!」
「そりゃ考え過ぎだろ。師匠は酒を飲んだって、そこまでヤワじゃない」
そう、彼は酒を飲んでも術を使えなくても、とんでもなく強い。
弟子の俺が言うんだから間違い無い。
「問題は、師匠が鎌を持って行ったと仮定して、その目的がわからないことだな」
「だから、エフォは…」
何をそんなに擁護しようとしているのだ。
「テムらしくない。別に、師匠が持って行ったと仮定して、それの何が悪い?
師匠が持って行ったのならば、それで良し。そうでなければ、俺がなんとかするよ」
そう言うと彼女は押し黙り、困ったように頷いた。
師匠は彼女にとって、唯一無二の戦友だ。疑われれば慌てるのも無理は無い。
俺もセイが疑われたならば、きっと、彼女と同じように擁護しようとするだろう。
俺は溜息を吐く。
「と言ってもなあ…こっから師匠んとこって、微妙に遠いし。師匠、携帯持ってないし」
「ふむ…ならば、手紙を使わすか!」
そう言って、彼女は部屋の隅に落ちていた紙を拾う。
拾った紙で手紙て、お前。
それ以前に、手紙より俺が出向いた方が余程早い。
「気の遠くなる話だから、やめた方がいいよ。俺が今から行って…」
やれやれと腰を上げた時である。
俺は、それに気付いた。
「テムレクト…お前」
「ん?」
「その紙…」
日を浴びぬ、白い手。そこには、先程部屋の隅で拾った紙。
俺は紙を彼女の手から奪い取ると、裏返しにする。
「………」
『鎌、借りていきます。ありがとう。
また返す時にでも、酒を飲みましょう。
追伸…酒に酔って寝るのはやめた方が良いと思う。冷えるよ』
ものすごく、見慣れた字だった。
首を傾げるテムレクトの前に差し出すと、彼女はなんとも形容しがたい表情を浮かべた。
「……な、なぜ。エフォール?」
「酒飲みながら、お互い武器だの装飾だのの話をしたって言ってたよな」
俺が言うと、ハッとした表情。今日のテム、表情コロコロ変わって面白いな。
「そうじゃ、そうじゃった。エフォが、術の補助としての装飾ではなく、武器性を持った装飾というのも面白いとかなんとか…言うておったような…?」
「それの参考に、鎌を借りてったわけだな」
俺は、テムレクトを見る。
テムレクトは、バツの悪そうな笑顔。
「……まあ、何事も無かったから、良いけどさ……」
思わず溜息が出た。
ホント、酒を飲み過ぎるのだけは勘弁してくれ。
かくして、平和な昼間は、酔っ払いババアによって潰されたのだった。
核にある自室に戻ると、出かける前よりも高く積まれた書類が、机の上に鎮座していて―――
――――― 俺は、今日何度目かの溜息を吐いた。
*/*/*/*/*
『精霊は化粧をするのか』を読んでおくと、話がわかり易い部分があります。
何か一つの事件を起こして、解決まで書いてみようと思ってやってみたのですが…。
4000字近い時点で、掌編の域を出ている。まあいいか。
いやまあ、昨日の『名前』も2000字突破しているのですが。
掌編はやっぱり、ワンシーンとして書くのが一番楽だなあ。
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