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2009.05.08に書いたもの再投稿。
確か前の日記にもあげてた。
和のキャラ設定を練る段階で書いたものです。
これがどうして今ドレスに珊瑚ネックレスでおろおろしてんの!
確か前の日記にもあげてた。
和のキャラ設定を練る段階で書いたものです。
これがどうして今ドレスに珊瑚ネックレスでおろおろしてんの!
おれは、牛車の車輪だった。
長いこともう一つと走っていたが、腐ってしまって山に棄てられた。
もう一つの行方は知れない。誰かに持ち去られて行ったのを見たのが最後だ。
何年も、牛車の車輪として走ったよりも、長い歳月。
雨と風をこの身に受けて、おれは心を持つようになった。
『心を持てるようになったのだから、いつかは立ち上がって走れる日が来るんじゃあないか』
そんなことを考えていたある日、
山の中にうち棄てられた廃材を寄せ集め、火を放った男が居た。
おれの身体は木でできていたから、そりゃあ焦ったさ。
けれども、おれは燃えなかった。
それどころか、おれの身体は火をまとって、立ち上がっていた。
そういう妖怪になったのだと知ったのは、もう少し後になってからだ。
兎にも角にも、おれはもう一度走れるようになったのが嬉しくて嬉しくてたまらなかった。
だから、おれはそこを抜けだして、色んなところを走ってまわることにした。
夜の野山を、駆け回るのが好きだった。
鳥が、獣が、おれを避けて通るのが楽しかった。
人間に使われるのではない。
おれの意志で、おれの足で、風を切って走れるのが何よりも嬉しくて。
それも最初の内だけだった。
以前は、もう一つや牛。それに、人間が居た。
使われるのはあまり気に入らなかったが、賑やかだったなあ。
けれど、今は誰も居ない。
もう一つはもちろん、牛もあのやかましい人間たちも、どこにも居ない。
鳥も、獣も、おれを恐れて避けて通る。
寂しい。
あの賑やかだった日々が胸に思い起こされて、
おれはとうとう山を降りて、人間の住むところへ出て行ってしまった。
おれは夜の村を、びゅんびゅんと駆け巡った。
夜は人がほとんど居ない。
だけど、たまに人間がいて、そいつをおどかしてやった。
情けない声をあげてあわ食って逃げるものだから、おかしくてしようがなかった。
そうしたら、人間は出て来なくなった。
それどころか、おれは「見ると祟られる」なんて言われて、嫌われてしまった。
ある家の女が、おれを見ていた。
気付かれないようにしているのか、こっそりと盗み見るようにしていた。
そいつの顔はおどかされた人間とおんなじ顔をしていたが、
その奥にはそいつの赤ん坊が居た。
その赤ん坊は大層かわいらしい赤ん坊で、
おれを見てきゃっきゃと笑ったのだ。
おれは、途端にその赤ん坊を抱えて走って行ってしまった。
あの時の気持ちは今でも忘れられない。
嫌われているおれを、好奇心から見ようとしていた女。
その女の傍らにいた、無邪気な赤ん坊の顔。
赤ん坊が居るのに危険を冒す母親に腹が立ったのと。
嫌われているおれを見て、楽しそうに笑う赤ん坊に、嬉しさを感じたのと。
だから、おれは赤ん坊を奪って逃げた。
あんな母親のもとに置いておくより、おれが育てた方が良いだろうなんて、そんなことを考えた。
そんなおれの気持ちはとても幼稚で、恥ずかしいものだったと思う。
母親の気持ちだとか赤ん坊の気持ちだとか、そんなものを全部忘れていた。
おれはこの赤ん坊を勝手に育てて、孤独である心を慰めようとしていたに違いない。
もちろん赤ん坊は、その後母親を求めて泣いてしまった。
泣き疲れて眠ってしまうまで、ずっとずっと泣いていた。
翌日になって女の家に行ってみたら、一枚の紙切れが貼ってあった。
そこには我が子を想う母の気持ちが書かれていて、
それを読んだおれは、自分をひどく恥じた。
赤ん坊はすぐに返した。
この子どもは、おれの手で育てるべきじゃない。
そう思って、玄関に置いて逃げた。
おれは、また、一人になってしまった。
長いこともう一つと走っていたが、腐ってしまって山に棄てられた。
もう一つの行方は知れない。誰かに持ち去られて行ったのを見たのが最後だ。
何年も、牛車の車輪として走ったよりも、長い歳月。
雨と風をこの身に受けて、おれは心を持つようになった。
『心を持てるようになったのだから、いつかは立ち上がって走れる日が来るんじゃあないか』
そんなことを考えていたある日、
山の中にうち棄てられた廃材を寄せ集め、火を放った男が居た。
おれの身体は木でできていたから、そりゃあ焦ったさ。
けれども、おれは燃えなかった。
それどころか、おれの身体は火をまとって、立ち上がっていた。
そういう妖怪になったのだと知ったのは、もう少し後になってからだ。
兎にも角にも、おれはもう一度走れるようになったのが嬉しくて嬉しくてたまらなかった。
だから、おれはそこを抜けだして、色んなところを走ってまわることにした。
夜の野山を、駆け回るのが好きだった。
鳥が、獣が、おれを避けて通るのが楽しかった。
人間に使われるのではない。
おれの意志で、おれの足で、風を切って走れるのが何よりも嬉しくて。
それも最初の内だけだった。
以前は、もう一つや牛。それに、人間が居た。
使われるのはあまり気に入らなかったが、賑やかだったなあ。
けれど、今は誰も居ない。
もう一つはもちろん、牛もあのやかましい人間たちも、どこにも居ない。
鳥も、獣も、おれを恐れて避けて通る。
寂しい。
あの賑やかだった日々が胸に思い起こされて、
おれはとうとう山を降りて、人間の住むところへ出て行ってしまった。
おれは夜の村を、びゅんびゅんと駆け巡った。
夜は人がほとんど居ない。
だけど、たまに人間がいて、そいつをおどかしてやった。
情けない声をあげてあわ食って逃げるものだから、おかしくてしようがなかった。
そうしたら、人間は出て来なくなった。
それどころか、おれは「見ると祟られる」なんて言われて、嫌われてしまった。
ある家の女が、おれを見ていた。
気付かれないようにしているのか、こっそりと盗み見るようにしていた。
そいつの顔はおどかされた人間とおんなじ顔をしていたが、
その奥にはそいつの赤ん坊が居た。
その赤ん坊は大層かわいらしい赤ん坊で、
おれを見てきゃっきゃと笑ったのだ。
おれは、途端にその赤ん坊を抱えて走って行ってしまった。
あの時の気持ちは今でも忘れられない。
嫌われているおれを、好奇心から見ようとしていた女。
その女の傍らにいた、無邪気な赤ん坊の顔。
赤ん坊が居るのに危険を冒す母親に腹が立ったのと。
嫌われているおれを見て、楽しそうに笑う赤ん坊に、嬉しさを感じたのと。
だから、おれは赤ん坊を奪って逃げた。
あんな母親のもとに置いておくより、おれが育てた方が良いだろうなんて、そんなことを考えた。
そんなおれの気持ちはとても幼稚で、恥ずかしいものだったと思う。
母親の気持ちだとか赤ん坊の気持ちだとか、そんなものを全部忘れていた。
おれはこの赤ん坊を勝手に育てて、孤独である心を慰めようとしていたに違いない。
もちろん赤ん坊は、その後母親を求めて泣いてしまった。
泣き疲れて眠ってしまうまで、ずっとずっと泣いていた。
翌日になって女の家に行ってみたら、一枚の紙切れが貼ってあった。
そこには我が子を想う母の気持ちが書かれていて、
それを読んだおれは、自分をひどく恥じた。
赤ん坊はすぐに返した。
この子どもは、おれの手で育てるべきじゃない。
そう思って、玄関に置いて逃げた。
おれは、また、一人になってしまった。
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