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レポート、あと4つ。
7/4に学会。7月に長袖シャツとスーツ+お外で受付は厳しいです。
印彫ったらモールス信号できた。
空間超越で着いた先は、荒廃した土地の真ん中だった。
乾いた風が虚しく彷徨い、耳元で唸りをあげる。
「前も来たけど、不気味なとこだよね」
ネリィが眉をしかめて言った。
ここは精霊界で唯一、まったく生物が存在しない場所である。
“死者の谷”と呼ばれるここでは、約200年前に、争いがあった。
どのような争いか、俺は聞いた話や本でしか知らないが、最後にはここに住んでいた者は皆死んでしまったそうだ。
精霊は不老とはいえ、不死ではない。戦って、傷付けば死ぬ。
けれども、その体は死すれば霧となって散るのである。
だからこの地に屍は無い。
戦いの爪痕だけが、この場所を悲しく気味の悪いものにさせていた。
「こんな場所を通らなくちゃいけないだなんて、嫌になる…」
こうした殺伐とした空気は、ネリィは慣れてはいない。
肩を抱いて不安そうにしていた。
「仕方がないじゃないか。ここまでしかトべないんだから」
「でもお」
「端から端まで歩くわけじゃないだけ、マシだと思え。ド真ん中から端までなら楽だろう」
俺が言い放つと、ネリィはしかめていた眉を更に強く寄せた。
言い返す言葉が見つからないようで「あー」とか「うー」とか言っている。
俺だって別に、こんな荒れた地を好き好んで歩いているわけではない。むしろ気味が悪いくらいだ。
だけど、仕方がないじゃないか。あいつはこの先に居るのだから。
「………はあ」
ネリィもやがて諦めたのか、無言で歩くようになった。
そうしてしばらく無言で進んだ後、硬い地面が急に柔らかくなった。
と同時に、光も遮るような深い森に入った。
このように土地が急変するのは、200年前の争いからこの森を、彼女が護ったからである。
悪い言い方をすれば、争いを止めずに自分だけを守ったのだが、
そうして彼女を咎める者は、今は誰も居ない。
「わざわざこんな所に住まなくても良いと思うのに。ねえ、しゅうちゃん?」
「年取ると、人の来ないとこに住みたくなるもんなんだろ」
現に俺の師匠がそうだし。
「隠居?」
「隠居とはまた違うと思うが。隠居だったら樹の主の座をとっくに降りてる」
「そっか、隠居とは違うんだ」
自然の主の下には六大主というものがあり、各属性(火水風土樹空)の中より最も優れた者がその属性を統べるのである。
今、会いに行こうとしている彼女は樹の主であり、自然界の植物を見守っている。
と言うと聞こえは良い。
足場の悪い森を進めば、やがてとても大きな木に行きつく。
“時間樹”と呼ばれるそれは、ここが森の中心であって、樹の主の元に着いたということを示していた。
ネリィも俺も、きっとセイですらも、この樹に比べればちっぽけなものでしかない。その高さに思わず見上げてしまう。
なんでも、精霊界ができた時からずっとあるのだとか。
それで“時間樹”というのだから、果てしなく大きいのも頷ける。
俺が木に手を当てると、木の幹が大きく開いた。
大人一人が入れる大きさを、俺とネリィはくぐっていく。
彼女は、この木の中に住んでいた。
時間樹の内部は時空である。
本来ならば時空は各界の裏側に潜むものなのだが、
たまに綻びのように表側に出てくることがある。
それを放置していると、人間が人間界にある綻びから精霊界の綻びに出てくることがあるのだ。
それを防ぐために、彼女はこの木の中にある時空を切り取って独自の空間を作成し、管理する意味でもここに住んでいるのである。
明かりの無い廊下を歩き、階段を降りると、柔らかい光が出迎えてくれた。
光の中に一人、女性が椅子に腰掛けてこちらを見ている。
「なんぞ用か?しゅう」
彼女――テムレクトは、そこでニヤニヤと笑っていた。
乾いた風が虚しく彷徨い、耳元で唸りをあげる。
「前も来たけど、不気味なとこだよね」
ネリィが眉をしかめて言った。
ここは精霊界で唯一、まったく生物が存在しない場所である。
“死者の谷”と呼ばれるここでは、約200年前に、争いがあった。
どのような争いか、俺は聞いた話や本でしか知らないが、最後にはここに住んでいた者は皆死んでしまったそうだ。
精霊は不老とはいえ、不死ではない。戦って、傷付けば死ぬ。
けれども、その体は死すれば霧となって散るのである。
だからこの地に屍は無い。
戦いの爪痕だけが、この場所を悲しく気味の悪いものにさせていた。
「こんな場所を通らなくちゃいけないだなんて、嫌になる…」
こうした殺伐とした空気は、ネリィは慣れてはいない。
肩を抱いて不安そうにしていた。
「仕方がないじゃないか。ここまでしかトべないんだから」
「でもお」
「端から端まで歩くわけじゃないだけ、マシだと思え。ド真ん中から端までなら楽だろう」
俺が言い放つと、ネリィはしかめていた眉を更に強く寄せた。
言い返す言葉が見つからないようで「あー」とか「うー」とか言っている。
俺だって別に、こんな荒れた地を好き好んで歩いているわけではない。むしろ気味が悪いくらいだ。
だけど、仕方がないじゃないか。あいつはこの先に居るのだから。
「………はあ」
ネリィもやがて諦めたのか、無言で歩くようになった。
そうしてしばらく無言で進んだ後、硬い地面が急に柔らかくなった。
と同時に、光も遮るような深い森に入った。
このように土地が急変するのは、200年前の争いからこの森を、彼女が護ったからである。
悪い言い方をすれば、争いを止めずに自分だけを守ったのだが、
そうして彼女を咎める者は、今は誰も居ない。
「わざわざこんな所に住まなくても良いと思うのに。ねえ、しゅうちゃん?」
「年取ると、人の来ないとこに住みたくなるもんなんだろ」
現に俺の師匠がそうだし。
「隠居?」
「隠居とはまた違うと思うが。隠居だったら樹の主の座をとっくに降りてる」
「そっか、隠居とは違うんだ」
自然の主の下には六大主というものがあり、各属性(火水風土樹空)の中より最も優れた者がその属性を統べるのである。
今、会いに行こうとしている彼女は樹の主であり、自然界の植物を見守っている。
と言うと聞こえは良い。
足場の悪い森を進めば、やがてとても大きな木に行きつく。
“時間樹”と呼ばれるそれは、ここが森の中心であって、樹の主の元に着いたということを示していた。
ネリィも俺も、きっとセイですらも、この樹に比べればちっぽけなものでしかない。その高さに思わず見上げてしまう。
なんでも、精霊界ができた時からずっとあるのだとか。
それで“時間樹”というのだから、果てしなく大きいのも頷ける。
俺が木に手を当てると、木の幹が大きく開いた。
大人一人が入れる大きさを、俺とネリィはくぐっていく。
彼女は、この木の中に住んでいた。
時間樹の内部は時空である。
本来ならば時空は各界の裏側に潜むものなのだが、
たまに綻びのように表側に出てくることがある。
それを放置していると、人間が人間界にある綻びから精霊界の綻びに出てくることがあるのだ。
それを防ぐために、彼女はこの木の中にある時空を切り取って独自の空間を作成し、管理する意味でもここに住んでいるのである。
明かりの無い廊下を歩き、階段を降りると、柔らかい光が出迎えてくれた。
光の中に一人、女性が椅子に腰掛けてこちらを見ている。
「なんぞ用か?しゅう」
彼女――テムレクトは、そこでニヤニヤと笑っていた。
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