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遅くまで出かけていたので、投稿はきっと遅刻。
WEB拍手での御題提供、ありがとうございます!とても助かります…!
内容は、じっくりと考えさせて頂きますね。
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内容は、じっくりと考えさせて頂きますね。
- 風花 -
その日は、珍しく二人揃って外へ出かけた。
何てことは無い。散歩に行くと言ったら、セイが『俺も行く』とついて来たのだ。
何でついて来るんだ?と尋ねたら、暇だからと答えられた。
「寒い。今日は一段と寒い。寒いのは嫌いだ」
身を縮こまらせて、彼はそう言う。
一つに束ねた長い金髪は緩やかな風になびく。
深い緑の瞳はキュッとつむられて、まるで風を認めたくないと拒絶しているかのようで。
あまりの寒さに、手袋をはめた両手をジャケットのポケットに突っ込んで、彼は肩を怒らせた。
「そう言われてもな。今日は山間部じゃ雪が降ってるそうだから」
俺がそう言うと、彼は空を仰いで、
「……晴れてるんだけど」
と、呟いた。ここは平地なんだが。
俺は答えずに、黙々と歩く。
セイは相変わらず、空を見ながら歩く。
よく上を見たまま歩けるもんだ。
「平和だなあー」
セイはそうかもしれないが、俺は平和ではなかったりする。
俺がこうして散歩に出るのは…何も、暇だからというわけではない。
書類処理ばかりでうんざりしてきて、外の空気を吸いたくなったからだ。いわゆる“現実逃避”である。
もちろん、セイはそんなこと、微塵も知らない。
「…そうだなあ」
けれど、俺は彼の言葉に相槌を打った。
今輝いている太陽のように、明るい彼の言葉に合わせれば、何とは無く救われるような心地がしたのだ。
家に帰って待っているのは、ただの現実だと知りながら。
思わず溜息をこぼすと、セイは首を傾げて俺を見た。
何でもないと言わんばかりに、俺は苦笑する。
いかんいかん。こういうことを顔に出してしまうのは、悪い癖だ。
「………」
「………」
お互いぼんやりと道を行く。
空き地を通り、住宅街を抜け、小学校の前を歩き…。
横を見るとセイは少し退屈そうにしていた。
彼にとっては、こうして景色を眺めながら歩くことは、退屈だろう。
もしかすると、家の中に居るよりも暇かもしれない。
…それがわかっていたから、何でついて来るのか尋ねたんだけどなあ。
ていうか、何で寒いの嫌いなくせに、ついて来たんだよ。
ただ、セイは退屈だとは一言も漏らさなかった。
俺もそんな彼に声を掛けることはなく、周りを観察しながら足を運ぶ。
沈黙の中、ふと、冷たい匂いを感じた。
次の瞬間―――
「わ」
「うお」
―――― 突如横から吹き荒れる、風。
思わず目を閉じる。
冷たいものが手に、顔に、ぶつかった。
「つめてっ!!」
それはセイにも直撃したようで、彼は悲鳴を上げた。
「雨…?!」
「いや、雪だ」
これは雨ではない。
晴天の下、風と共に舞う光を、俺は見た。
「な、なんだアレ…」
隣も驚いて、冷たい光を眺めている。
「……珍しい。風花だ」
「風花?」
「晴れてるのに、雪が風に舞う現象だよ」
もちろん、晴天の中で雪が長く生き続けられるわけがない。
「へえ…」
セイが感嘆の声を漏らしてすぐ、風花はすう、と溶けて居なくなった。
「………」
「………」
横を見るとセイは呆けたような顔をしていた。
初めて見たのだろう、その目には、キレイな輝きが宿っている。
彼は今、その目に冬を、映しているのだろう。
「…さあ、そろそろ帰ろうか」
「……おう」
さっきまで、帰りたそうな顔をしていたくせに。
子どものような輝きを、少し、羨ましいと思った。
街を歩けば、春を待つ気配を感じる。
もうしばらく待てば、花が咲き乱れる季節になる。
まだ寒い。まだ寒いけど、今日のような冷たい匂いのする花、俺は嫌いではない。
きっと、セイもただ嫌い…というわけでは、なくなったのではないか。
(…さて、帰ったら頑張ろう)
心の中で呟く。
疲れるけれど、現実と向き合おう。
やる気がちょっとだけ、出てきたのだから。
その日は、珍しく二人揃って外へ出かけた。
何てことは無い。散歩に行くと言ったら、セイが『俺も行く』とついて来たのだ。
何でついて来るんだ?と尋ねたら、暇だからと答えられた。
「寒い。今日は一段と寒い。寒いのは嫌いだ」
身を縮こまらせて、彼はそう言う。
一つに束ねた長い金髪は緩やかな風になびく。
深い緑の瞳はキュッとつむられて、まるで風を認めたくないと拒絶しているかのようで。
あまりの寒さに、手袋をはめた両手をジャケットのポケットに突っ込んで、彼は肩を怒らせた。
「そう言われてもな。今日は山間部じゃ雪が降ってるそうだから」
俺がそう言うと、彼は空を仰いで、
「……晴れてるんだけど」
と、呟いた。ここは平地なんだが。
俺は答えずに、黙々と歩く。
セイは相変わらず、空を見ながら歩く。
よく上を見たまま歩けるもんだ。
「平和だなあー」
セイはそうかもしれないが、俺は平和ではなかったりする。
俺がこうして散歩に出るのは…何も、暇だからというわけではない。
書類処理ばかりでうんざりしてきて、外の空気を吸いたくなったからだ。いわゆる“現実逃避”である。
もちろん、セイはそんなこと、微塵も知らない。
「…そうだなあ」
けれど、俺は彼の言葉に相槌を打った。
今輝いている太陽のように、明るい彼の言葉に合わせれば、何とは無く救われるような心地がしたのだ。
家に帰って待っているのは、ただの現実だと知りながら。
思わず溜息をこぼすと、セイは首を傾げて俺を見た。
何でもないと言わんばかりに、俺は苦笑する。
いかんいかん。こういうことを顔に出してしまうのは、悪い癖だ。
「………」
「………」
お互いぼんやりと道を行く。
空き地を通り、住宅街を抜け、小学校の前を歩き…。
横を見るとセイは少し退屈そうにしていた。
彼にとっては、こうして景色を眺めながら歩くことは、退屈だろう。
もしかすると、家の中に居るよりも暇かもしれない。
…それがわかっていたから、何でついて来るのか尋ねたんだけどなあ。
ていうか、何で寒いの嫌いなくせに、ついて来たんだよ。
ただ、セイは退屈だとは一言も漏らさなかった。
俺もそんな彼に声を掛けることはなく、周りを観察しながら足を運ぶ。
沈黙の中、ふと、冷たい匂いを感じた。
次の瞬間―――
「わ」
「うお」
―――― 突如横から吹き荒れる、風。
思わず目を閉じる。
冷たいものが手に、顔に、ぶつかった。
「つめてっ!!」
それはセイにも直撃したようで、彼は悲鳴を上げた。
「雨…?!」
「いや、雪だ」
これは雨ではない。
晴天の下、風と共に舞う光を、俺は見た。
「な、なんだアレ…」
隣も驚いて、冷たい光を眺めている。
「……珍しい。風花だ」
「風花?」
「晴れてるのに、雪が風に舞う現象だよ」
もちろん、晴天の中で雪が長く生き続けられるわけがない。
「へえ…」
セイが感嘆の声を漏らしてすぐ、風花はすう、と溶けて居なくなった。
「………」
「………」
横を見るとセイは呆けたような顔をしていた。
初めて見たのだろう、その目には、キレイな輝きが宿っている。
彼は今、その目に冬を、映しているのだろう。
「…さあ、そろそろ帰ろうか」
「……おう」
さっきまで、帰りたそうな顔をしていたくせに。
子どものような輝きを、少し、羨ましいと思った。
街を歩けば、春を待つ気配を感じる。
もうしばらく待てば、花が咲き乱れる季節になる。
まだ寒い。まだ寒いけど、今日のような冷たい匂いのする花、俺は嫌いではない。
きっと、セイもただ嫌い…というわけでは、なくなったのではないか。
(…さて、帰ったら頑張ろう)
心の中で呟く。
疲れるけれど、現実と向き合おう。
やる気がちょっとだけ、出てきたのだから。
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